息の長い子ども支援を、社会全体で
子どもの声を、これからも聞き続ける
~チャイルドラインみやぎ~

宮城で20年以上、子どもたちの声を受け止めているチャイルドラインみやぎ。電話で子どもの悩みを聞く「受け手」とそれを支える「支え手」が一体となって、活動しています。子どもの話を聞くことの重要性を、代表の小林純子さんに教えてもらいました。

写真:小林純子さん

小林純子さん
チャイルドラインみやぎ 代表理事

親を対象とした子育て支援活動を経て、チャイルドラインみやぎ設立に尽力。仙台では転勤族の家庭が孤立しやすいといった地域の課題から、虐待や子どものSOS発信の受け皿をつくる重要性を早くから指摘した。ボランティアである電話の受け手の育成や、チャイルドラインの活動を通じて分析した子どもの傾向を広く発信している。

チャイルドライン:0120-99-7777
通話料無料(携帯・スマホもOK)
時間:毎日16時~21時

あなたの心の荷物を話して軽くしてほしい

チャイルドラインは、18歳までの子どもたちの話を聞く電話です。1986年、イギリスで始まった虐待防止ホットラインをモデルにしています。子どもがSOSを出す・相談することができる取り組みとして全国に紹介され、国内では現在68団体が活動しています。

秘密厳守で、名前や学校名を尋ねることもありません。どんなことでもいいので、好きなときに好きなだけ話してほしい。チャイルドラインみやぎは2001年に活動を開始し、現在ではボランティア約50人が「受け手」として登録しています。当初は県ごとに電話を受けていましたが、現在は全国一律のフリーダイヤルにつながります。 

「子どもの荷物を受け止めて軽くする」のが私たちの役割です。人に知られたくないことでも、一人で悩み続けると、ストレスがどんどん大きくなってしまいます。私たちは子どもたちの話を聞くために時間をささげるつもりで待っていますから、世の中に必ず誰か、話を聞いてくれる大人がいることをどうか知ってほしいと思っています。

子どものコロナ疲れも注意が必要です

宮城県内からの電話の件数は、年間2、3千件ほど。常時電話が鳴り、最近は一件あたりの時間も長くなってきていますが、原則として子どもが電話を切るまで、時間制限は設けずに向き合います。新型コロナウイルス感染症拡大により、休校になったときに虐待からの逃げ場がなくなってしまった、親の仕事に影響があった、先生たちもピリピリしている、などの電話が増えました。全国的に子どもたちの自殺が増えたという発表もあったため、チャイルドラインのカード配布を強化し、周知を図っています。

直近の調査では、宮城の子どもたちは、長引くコロナ禍の影響を強く受けているようで、全国的な傾向に比べ「疲れ」を感じている割合が多いです。震災後の状況と似ていて、親が大変なときは子どもが頑張っていますが、親が落ち着くころに、それまで押さえていた子どもの感情が「怒り・いらだち」となって現れるが可能性があります。

電話では、どうしていいか分からず泣いてしまう子もいます。それでも「どうしたらいいですか」との問いに大人が答えを教えるのではなく、自ら次の行動を決められるよう寄り添う「エンパワーメント」を心がけています。解決策がすぐに見つからなくても、悩みを吐き出して気持ちを軽くしてほしいです。

注意や説教はしない 気軽に電話して

チャイルドラインを「深刻な状況に置かれた人だけの連絡先」とは思ってほしくありません。テストで100点とってうれしかったとか、すぐに家で話したいけど親がいないから、といった理由で構いません。

チャイルドラインの大事なルールは、「ひたすら聞く」ことです。大人は経験豊富であるがゆえに、どうしても教えたくなるものですが、そこをぐっとこらえて「待つ」ように、研修では受け手にレクチャーします。

受け手は20代から70代まで、男女半々くらいです。子どもの泣き声を聞くとやはり心が揺さぶられますが、距離感を保ち、あくまで電話越しで支えます。かわいらしい雑談もある一方、深刻な悩みの訴えもあります。電話を受けた後は「振り返り」をして、職員や「支え手」が「今日のことはここに置いて帰ってね」と、気がかりを解消するよう声掛けします。“支える人を支える”仕組みも、発祥国であるイギリスの取り組みに学んでいます。

「聞く」スキルはなかなか高度なもの。普通の会話はラリーですが、ひたすら聞くには受け止めるための器量が必要です。受け手には学生から社会人までいますが、普段の会話をしやすくなった、会社の部下との関係や親子関係が良くなったという人は多いです。学生の中には、未熟な自分で大丈夫かと思う方もいますが、一緒に悩んでくれていることが子どもに伝わって、それが良い場合もあります。大変な活動ではありますが、個人にとっても豊かな経験になると思います。

子どもの心の健康には家庭での尊重が大切

親の理解を深めることの重要性も、強く感じています。学校に行くべきという考えが強く不登校を許せなかったり、悩みゆえの行動を叱責したり、親が子どもの気持ちを抑圧してしまうことがあるのです。家庭の理解不足で、治療が必要なほど精神的に追い込まれる子も多くいます。

親の前で電話したり、親自身が電話したりするケースもまれにありますが、あくまでも子どものための支援ですから、子ども自身に話してもらいます。子育てで悩んでいる親には、チャイルドライン全体の活動の一部として、私たちが知っている「子どもの感覚」や「子どもの権利」を講演などでお伝えしているので、歩み寄りに役立ててほしいです。

携帯電話の普及で子どもの人間関係が見えにくくなり、親の知らないところで、チャットの仲間外れや画像の拡散などの問題も起きています。リテラシーを得るより先に、ツールで遊んでしまっているわけです。研修の一環で弁護士によるSNS対策講座を開いていますが、受け手希望の方はもちろん、民生委員や里親からの反響も大きいです。

昔は各家庭に固定電話があり、留守番をしながら授業の愚痴を話してくれる子もいましたが、今は小学生の電話がとても少なくなっています。公衆電話や固定電話が減り、まだ携帯電話を持たされていない年齢の子どもたちが声を上げる機会を失っているのではと危惧しています。

子どもは親の言いなりになる存在ではありません。命を落とす以外はやり直しがきくのだから、失敗から学んで成長すればいい、という考え方を大人が共有すれば、子どもはもっと生きやすくなるはずです。

児童相談所(児相)の保護期間を過ぎた、成人までの18、19歳が支援の空白地帯になっているのも大きな課題です。未成年の間は親権があるため、子どもの権利が制限されてしまう事態が起きています。この層への支援と対策が必要となっています。

心の扉が開くまで私たちは待っています

子ども支援に携わる中で、「心の扉は内側からしか開かない」と言われたことがあります。せかさずに待って、子どもを尊重して接すれば、いつか心を開いてくれたときに初めて本当の気持ちが聞ける。チャイルドラインはその使命を果たす活動です。

電話は古いといわれるかもしれませんが、文面では拾いきれない機微を感じとれたり、面と向かっては言いにくいことが話せたりといった良さがあります。子どもたちには気軽に電話してもらい、大人たちには、今日から改めて子どもの尊重や支援について考えていただければ幸いです。

図表:チャイルドラインから見る子どもの現状

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