頑張りすぎない支援で子どもを笑顔に

子どもに食と居場所を提供する子ども食堂など、県内では多くの子ども支援活動が行われています。その後ろには、たくさんの「支援者を支える人」たちがいることをご存じでしょうか。支え続ける秘訣は、無理をしないこと。肩肘張らず子どもを支える方々を取材しました。

Interview01 美松食品工業有限会社 菅井隆壹さん

写真:会社の前に立つ菅井さん

菅井隆壹さん
美松食品工業有限会社 代表取締役

父親が1965年に創業した食品物流会社を承継。冷凍・冷蔵庫の設備を子ども食堂に食材の保管場所として提供している。

食品流通のプロの資源で「いつでもいいよ」の安心を

写真:保管されている食材

美松食品工業は、父が岩沼市で1956年に創業しました。以来、地域で食品物流と卸事業に取り組んでいます。 計1500トンの保管能力がある冷凍・冷蔵庫を保有しています。

子ども食堂とのつながりは2019年、冷凍食品を提供したのがきっかけです。食材提供を続けるうちに、いわぬま・こども食堂+(プラス)代表の坂本久子さんから「食材の保管場所に困っている」と相談され、冷蔵庫が役に立つならと無料で預かることにしました。

子ども食堂はボランティアが運営しているため、個人宅で寄付される食料品を保管するのは量や期間の限度があります。そのため食品提供の話があっても、いつでも受けられるとは限らず、せっかくの厚意を断らざるを得ない状況が少なくなかったそうです。

ここには3万~4万ケースの保管能力があり、子ども食堂が必要とする量であれば、いくらでも受け入れることができます。業務で培ったノウハウを生かして、預かった食材が無駄にならないよう、賞味期限や個数に応じて優先的に消費すべき物をお伝えするなど、在庫管理もお手伝いしています。

写真:工場外観

現在、岩沼市内4カ所の子ども食堂と連携しており、「いつでも使って」と声を掛けるなど気軽にコミュニケーションが取れる関係構築に気を配っています。

新型コロナウイルス感染症拡大の影響で一斉休校になり、冷凍食品が行き場を失ったときも、当社の冷蔵庫を活用してもらいました。食品は子ども食堂のフードパントリーなどで配布され、コロナ禍でより一層生活が苦しくなった家庭の一助になることができました。事業活動の延長のような形で、当社にできることをやっていますので、負担感なく地域に貢献できています。子どもたちからの「ありがとう」のはがきは本当にうれしいですし、反響はモチベーションになります。冷凍庫や冷蔵庫を持つ企業には、無理のない地域貢献としてぜひ保管場所の提供を買って出てほしいと思います。

Interview02 宮城教育大学 村上真彩さん

写真:村上真彩さん

写真:村上真彩さん

村上真彩さん
宮城教育大学 初等教育教員養成課程 教育心理学コース4年

南相馬市出身。東京電力福島第一原発事故では4年間、宮城県内で避難生活を経験。大学では教育心理学を専攻し、小学校教員を目指している。

現場でしか分からない子どもの葛藤に寄り添う

仙台市内の小学校で、学生サポートスタッフを4年間続けています。休日や放課後だけでなく、平日の授業時間にも関わることができると知り参加を決めました。

特別支援学級を含め、授業についていくのが難しい児童をサポートしています。大学で学んだ知識を実践する機会になり、さらに理解を深め、新たな発見をすることができます。今では子どもの特性に合わせた接し方ができるようになりました。

学習支援に加え、休憩時間なども一緒に過ごすこともあります。一見「学習支援」とは関係ないように思われますが、子どもとの信頼関係は学習意欲や普段の反応に大きく影響を及ぼします。

写真:折り紙と文房具

ある児童は授業中に教室から飛び出してしまい、走って追いかけることもしばしば。まずはサポート役の私に興味を持ってもらえるよう、好きなゲームを調べ、雑談できるよう心掛けました。その結果、だんだん話し掛けてくれるようになり、活動の最終日には「今日で最後だから」と、いつも大切にしていた金色の折り紙の剣をプレゼントしてくれました。自分の持ち物に執着の強い子にとって、お気に入りの物を手放すのはとても勇気のいることです。信頼してくれたのだと思うと、感慨深いものがありました。

特別支援学級の児童の中には、記憶力が非常に高い子もいます。一度私の誕生日を教えたところ、しっかり覚えていて1年後に当てられたことがあり、最初に反応がなくても、自分の世界に閉じこもっていると決めつけずに話し掛けることが大事だと学びました。

先生一人でやれることには限界があり、周りのサポートの重要性を実感しました。学級全体と個人、どちらも大切にするために、担任一人で全てを抱え込まず、ボランティアや学校支援員らと話し合い、役割分担をし、子どもたちを見守る先生を目指そうと考えています。

実際に教育の現場に出て、児童に触れながら学ぶことは多いです。教員を目指す学生は、ぜひ挑戦してほしいと思います。

Interview03 味噌醤油醸造元 太田與八郎商店 太田真さん

写真:お店の前に立つ太田真さん

写真:太田真さん

太田真さん
味噌醤油醸造元 太田與八郎商店

1845年創業。かつて塩釜は味噌醤油醸造元が多かったが、現在は太田與八郎商店を含む3カ所のみ。大正時代の面影を残す蔵と、釘を使わないモダニズム建築の店舗は、1993年に塩釜市文化景観賞を受賞。

楽しく遊びに行く気持ちで子どもたちを支えたい

当店は塩釜神社門前の旅籠はたごにルーツを持ち、味噌醤油みそしょうゆ醸造元としては江戸後期の1845年に創業しました。現在の蔵はおよそ100年前の1925(大正14)年、店舗は29年に建てられたものです。この街で、良い味噌と醤油を作り続けるのが使命と考えています。

子育てが一段落し、これからは世の中の子どもたちに何かできないかと思っていた頃、新聞で子ども食堂の取り組みを知りました。味噌や醤油を活用して貢献したいと「せんだいこども食堂」にコンタクトを取り、活動を応援することになりました。

最初は味噌を提供していましたが、「子どもたちが家族や食堂スタッフと一緒に取り組むことができる体験型のイベントを実施したい」との話を聞き、味噌作り体験会を提案し、2016年から4回ほど開催しています。

写真:味噌づくりのようす

参加者全員で蒸した大豆をつぶし、米こうじと塩を混ぜてこね、小分けにして容器に入れます。力の弱い子どもたちでもつぶしやすいように、大豆は軟らかめに蒸しています。その後半年ほど各家庭で保存・管理してもらいますが、発酵の進み具合が不安な場合は問い合わせにも対応しています。

何よりも子どもたちの楽しそうな姿を見ること、後日完成した味噌を味わった感想を聞くことが喜びです。また、お店に来てくれた親子がいたり、知り合った子どもたちと再会できたりするとうれしいですね。

最近はコロナ禍のため活動は休んでいますが、せんだいこども食堂の「白ヤギプロジェクト」という文通の取り組みに参加し、手紙に味噌についての豆知識の問題を出題しています。再開できたら醤油作りも体験してもらいたいと考えています。

企業の地域貢献として寄付や支援に取り組んでいるという身構えた感覚ではなく、子どもたちの顔を見てこちらが元気をもらっていると捉えています。誰かと一緒に何かを経験する、そうした触れ合いが子どもたちの心のよりどころになってほしいと願っています。

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