学生だからできる、寄り添い方がある

ボランティア活動や子ども支援に取り組むのは、社会人だけではありません。大学生は、大人でもありつつ、自身の子ども時代の経験や影響が色濃く残っている時期。自らのうれしい経験・つらい経験を、より良い形で次の世代に還元しようと子ども支援に取り組む学生たちの声とは。

Interview01 NPO法人アスイク まなびサポート

NPO法人アスイク まなびサポート

2011年、東日本大震災をきっかけに任意団体として設立、NPO法人化。教育支援を中心に、幅広い活動に取り組む。

子どもが安心できる居場所をつくりたい

写真:学習支援のようす

「困っている子どもや親の味方が、たくさんいる社会」をビジョンに掲げ、数多くの支援事業を行う仙台市のNPO法人アスイク。職員やボランティア400人以上が活動する学習支援事業「まなびサポート」は、一人親や生活保護を受ける家庭を対象に、宮城県内33カ所で中学生の居場所となる教室を運営しています。

アスイクのスタッフとボランティアがチームを組み、子どもたちの学習支援や生活相談を行っています。学生スタッフはコーディネーターの職員のもとで、各教室に2人配置されるサブコーディネーターを担います。

まなびサポートに挑戦したきっかけや、活動を通して得られる気づきは十人十色ですが、「自分がされてうれしかったサポートをしたい」「自分自身のつらい経験を今の中学生にはしてほしくない」という願いは多くの学生に共通しています。

相馬市出身の原亜実さんは、東日本大震災後の混乱で学習環境に影響が出ていた頃、東京から来た学生ボランティアによる学習支援に救われた経験が今の活動につながっているといいます。「被災してつらかった思いを受け止めてもらえたことで、高校進学に前向きな気持ちになりました」と説明。一方で、「高校では支援がなく、悩んだ時期もあった」と継続的な支援の重要性を痛感。まなびサポートを知って迷いなく参加を決めました。活動は3年目に入り、関わった中学生は数十人。置かれた環境が進学に大きく影響することを再確認し、悩む子どもにとっての「身近なお手本になりたい」と意気込みます。

支援を受ける子どもたちの中には、家事や介護を担う「ヤングケアラー」として過ごすなど、一見しただけでは困窮していると分かりにくい「相対的貧困」に置かれているケースが数多くあります。

今年5月から参加する倉田真奈さんは「中学生活で悩み、苦しむ経験をしたので、教室に来る子たちには楽しい時間を過ごしてほしい」と話します。自分の行動が子どものためになっているのか葛藤することが多いとしながらも、「倉田さんが行くなら私もキャンプに参加する」という子どもの言葉が心の支えになっているとのこと。

アスイクの活動を知りながらも、「支えたいとの思いを実際に行動で示すことができるとは限らない」と1年間悩み、十分考えてから参加を決めたのは大槻綾さん。活動は自身の強味に気づかされるきっかけになったといいます。一人親家庭で育ち、奨学金について調べた経験からあ、母子家庭で学費の工面が不安で進学をためらう子どもに、「諦める必要はない」と励ますことができたと話します。「数字や情報収集に自信がある一方で、悩みを聞いて感情移入し過ぎる傾向がある」と自己分析し、自分なりの支援の仕組みづくりを模索しているそうです。

まなびサポートを通して、3人が共通して感じるのは「居場所」の重要性。「子どもたちが認められる場所」をつくる大人になるべく、これからも挑戦は続きます。

NPO法人アスイク まなびサポートの3人。掲示板の前で。

(左)東北学院大学 法学部 法律学科3年 倉田真奈さん(21)
(中)東北福祉大学 総合福祉学部 福祉心理学科3年 原 亜実さん(20)
(右)仙台白百合女子大学 人間学部 心理福祉学科3年 大槻 綾さん(20)

Interview02 東北学院大学セツルメント会

東北学院大学セツルメント会

1955年設立。メンバー自身のボランティア参加と、学内でのボランティアあっせんに取り組む。

実践する、つなぐ 両輪の活動が心の糧に

写真:ボランティア掲示板と取材を受ける3人

東北学院大学セツルメント会は66年の歴史あるボランティア活動サークルです。「セツルメント」とは、英語で「定住」「解決」などを意味する言葉で、1800年代に英国で始まった労働者街に住み込んで行う慈善事業を指します。日本では1923年の関東大震災後に本格化した福祉活動が起源となり、全国に伝わって学生活動として広く定着しました。

会の主な活動は二つ。会員自身がボランティア活動に実際に参加すること、会員以外の慈善活動に興味がある学生にボランティアを紹介し、サポートすることです。

近年、代々継続して行ってきたものとしては、児童養護施設を訪問して子どもの学習支援をしたり、遊び相手をしたりすること。また、病院で筋ジストロフィー患者のお手伝いや話し相手を務めるという活動でした。

コロナ下では訪問しての活動の在り方に変化や制限が生まれ、特に病院は外部からの訪問が難しくなりました。しかし、逆風の中でも活動を止めないために、今年度から仙台市ボランティアセンターの情報誌「にこボラ」を活用しています。誌面のボランティア募集情報を基に、学生の受け入れが可能な児童館を探して訪問しています。

大学1年から活動に参加している委員長の服部京佳さん。月1、2回、市内の児童館で子どもの遊び相手をしています。「教員を目指しており、子どもたちの仲裁役を買って出たり、まとめ役を担ったりと、『大人』として接する経験がとても新鮮です」と目を輝かせます。

小学校の頃に児童館に通い学生ボランティアと触れ合ったことが思い出という竹内貴理さんは「私が男子学生に遊んでもらった楽しい記憶を、次の世代の子どもたちに伝えたい」と活動。「壁をつくらないよう、子どもの気持ちを酌み、目線を合わせて話しかけるようにしています。最近、じゃれてくることもあるのは、信頼の証しかな」と笑顔を見せます。

塩釜市出身の三浦杏斗さんは、東日本大震災をきっかけにボランティアに興味を持ちました。自ら活動に参加することはもちろん、これから参加する他の学生が戸惑うことがないよう、情報発信や説明会への同行も率先して取り組んでいます。「知らない世界や活動に飛び込むことには勇気が必要です。安心して参加できるよう後押しをしたいですね」と話します。

かつては相手の立場や気持ちを想像することが苦手だったという三浦さん。ボランティア活動を通じて異なる境遇や立場の人と出会い、コミュニケーションを図ったことで、相手の気持ちを想像する思いやりが生まれたと実感しています。

三浦さんは「ボランティアは自分の心がきれいになる何物にも代えがたい経験です」と胸を張り、「『無償だし、大変そう』というイメージを持っている人こそ、経験してほしい。一緒に活動してみませんか」と呼び掛けます。

セツルメント会の3人。大学の本館前にて。

(左)文学部歴史学科3年 竹内貴理さん(21)
(中)文学部教育学科3年 服部京佳さん(21)
(右)法学部法律学科3年 三浦杏斗さん(20)

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